Delices a table

深い朝霧に目覚めるペリゴールの休日

見事な満月に目も心も奪われた翌朝、シャンブルドートの窓を開けると一面が曇りガラスの向こうのような深い霧。外に出ると猫のロメオが早々と朝のお散歩中。ローズマリーの枝にからまったきらきら朝露に光るクモの巣で遊んでいます。もともとは野良だったロメオ。時々食事の味見をしにこの家にやって来ていたものが、ある時腕に大怪我をして玄関先で動けなくなっていたのだそう。近くの獣医さんに連れてゆくと、これは腕を切るしかないと言われ、そこを大きな街の獣医さんに頼んで手術をしてもらったのだそう。


骨は金属板とビスで止められているので高いところから飛び降りるのは苦手だけれど、今ではこうして元気に、この家の飼い猫として暮らしています。めでたし、めでたし。オーナーのご夫妻はペリゴールに魅せられて移住してきたイタリア人。朝食のために手作りしてくれた何種類ものジャムやブリオッシュは美味しかったし、地元の案内はとても心がこもっていて有難かったけれど、猫のロメオがこうして幸福な日々を送っていることを皆で祝福できたこと、これが一番の思い出かもしれません。

年越しのじゃがいもとりんごで ポタージュ・ポンポン

5月も半ばを過ぎると畑では新ジャガの収穫が始まります。この頃の八百屋の店先には、はがれかかった薄皮が初々しいじゃがいもと一緒に、厚い皮にニキビあとのように芽がポツポツした越冬じゃがいもも並んでいます。新ジャガはリソレのような調理法には向きますが、蒸す、茹でる、煮込むといった料理に採れたてじゃがいもは不向きで、水分が失せたぶん風味が濃くなった越冬じゃがいもを好んで買う人はまだいるのです。写真のじゃがいもは北フランス、ピカルディー地方で生まれたポンパドールという比較的新しい品種。本来なら皮付きのまま蒸したり茹でたり、あるいは煮くづれしにくいことで煮込みに向くものなのですが、今日は同じく越冬させたりんごのシャンクレールと一緒に煮込んでポタージュにしてみました。市場ではアバタだらけのしなびたりんごでさえも売り物になるのがフランスです。秋のりんごのようなジューシーさがないぶん、じゃがいもと同じくその凝縮された旨味はなかなかのもの。りんごの甘酸っぱさが加わってぐっと美味しくなるこのポタージュ、りんごはポンム、じゃがいもはポンム・ド・テールということで、ポタージュ・ポンポンと名付けてみました。お好みでセロリ少々加えても美味しいですよ。

長年愛用する水回りの優れものたち

パリに自宅を移してまる四半世紀。その家の心臓、キッチンで長年愛用する水回りのものたちです。    まず布巾。奥は20年以上前にバスクで、手前は20年ほど前にアルザスから持ち帰ったもの。その丈夫さ、使い込むほどの馴染み感はいつどこで買ったかの記憶と共に衰えることがありません。それに対して台拭きはモコモコ繊維の日本製が秀逸。 タワシは30年以上前に自由が丘ピーコックで買って気に入り、まとめ買いした優れもので残りあと三個。握りやすくブラシの毛の方向が絶妙で、はさまった汚れも取り除きやすい。そしてガリガリこびりつき落としには和製銀のスポンジ、食器洗いは有元葉子さんのラ・バーゼ。掌にすっぽりおさまりきめ細かな泡立ちでこれに勝るものなし。痛んだらいつまでも使わずにパッと掃除用にまわし、どんどん!新しくします。そして真ん中の黒いもの、これはトリュフ用ブラシで今年のニューフェイス。トリュフ用としたら出番少な過ぎですから、ウチでこれはじゃがいも洗い用。  洗剤は自然食品店ナチュラリアでいつも買うecover。好きだったグレープフルーツの香りがこのところ手に入らず、ちょっと不満。  そして洗い籠、これは常にアメリカンです。ワイヤーがビニール加工されているので音が立たず、両サイドにはグラスを伏せて引っ掛けるフックがあるのもポイント。パリでは見かけないので、これは東京の実家近所のスーパー、ナショナル田園で。  ところでアメリカンといえばうちの大型冷蔵庫。引っ越し以来25年間動き続けているのは感動的ですらありますが、当時のものですし、アメリカンだし、消費電力高いのでしょうね、、、。

これは牡丹か芍薬か ほれぼれと顔寄せ見つめるピヴワン

一つだけ好きな花を挙げてと問われたら、それは八重の Pivoine (ピヴワン)と答えましょう。色は白か、淡い桜色。朝市から連れ帰った時にはかたく閉じていた蕾が、午後にはこんなに見事に開いてくれました。茎は湯切りして、さらにお湯に生けると水上げしやすいのですが、今日はあまりにも咲き急いであっという間にこの大輪。おぉ!と思わず声が出る見事な咲きっぷりにほれぼれして顔寄せ見つめると、その見事な存在感にしては可憐な一面にハッとさせられます。Pivoine を辞書で引くと牡丹。え?私が好きな花は芍薬ではなかったの?そんなはずは、、、と思いながらも逆を引かなかったのがうかつでした。しばらくして芍薬をフランス語ではなんと?と調べてみると、それもまた pivoine !でもわかりました、牡丹は樹木、芍薬は草なのだそうで、私が好きな Pivoine は茎の細さと葉の形からして芍薬だったのです。花言葉、牡丹は高貴、そして恥じらい、芍薬は威厳、はにかみ。画像クリックで大きくして、皆さんも見つめてあげて下さいな。

フランス産フルーツヴィネガーを知って味わう料理の会

2016年6月19日(日)20日(月)12:00〜14:30
@玉川田園調布 えんがわinn

日本のスーパーの棚に並ぶオリーブオイルの種類の多さには驚ますが、それに比べてヴィネガーはいまだに限定的です。フランス産ヴィネガーのほとんど はワイン酢で、たまにリンゴやフランボワーズを見かけることはあってもシトロン、ブルーベリー、苺、マンゴ、デーツなどなど、その他の果実から造られたも のはあまり出回っていません。ヴィネガーというと料理を酸っぱくするもの、くさみを消すもの、保存効果があるというイメージで、その旨味効果で料理の風味 のまとめ役として重宝な点にはさほど着目されていないようです。フランス料理といえばソースですが、家庭で毎日手間をかけてソースを作るわけにもゆきませ ん。しかし上質のオイルやバターとフルーツヴィネガーを使うことで、あとは焼き汁や少量の水やクレームだけでも美味しいソースはできるものなのです。そこ で今回は上野万梨子が長年愛用するフランス産各種フルーツヴィネガー、長期熟成させたシェリーヴィネガー、林檎のコンフィを使った濃厚なヴィネガーなども とりあげて、前回のバターに続いてフランス料理になくてはならないベーシック素材、フルーツヴィネガーの勉強会を企画しました。詳しくはこの画面右上料理教室の案内欄から。

*写真はアンディーヴの蒸し煮。ベーコンとバターの風味がしみこんだほろ苦いアンディーヴにシードルヴィネガーの甘酸っぱさをまとわせて。

「Délices à table」記事一覧へ »